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夢を走り続ける女たち
−女子マラソン炎の闘い−

夢を走り続ける女たち
著者 増田明美
出版社 講談社
出版年月 2004年5月
価格 \1,700
入手場所 市立図書館
書評掲載 2004年7月
★☆☆☆☆

 マラソン・駅伝などのテレビ中継で、ランニング解説者としてお馴染みの著者が、アテネオリンピック女子マラソン代表選考に至る過程を追ったルポ。

 代表に選ばれた3名はもちろん、選考に漏れた高橋尚子選手や千葉真子選手(補欠)、弘山晴美選手(10000m代表)、渋井陽子選手などの国内の有力選手だけではなく、ポーラ・ラドクリフ選手や、リディア・シモン選手などの、海外有力選手らの取材も加えて、非常に豊富な話題を提供してくれる。
 4年に1度しかないオリンピックという特別な舞台で、前回のシドニー大会からどんな心境でアテネ大会への選考を迎えたのかをテーマに据えていて、夢を追いつづける彼女たちの、オリンピックに対する想いを探っている。

 ところで、著者はかつて日本の女子長距離界のパイオニアとして活躍した競技者であることに加えて、誰からも愛される人柄から、取材される側が気軽にインタビューに応えてくれている様子が、この本から伝わってくる。
 それだけに、「この言葉の中には、こんな意味が込められているのでは」といった、プロのジャーナリストらしい深い追求が欲しかった。全体の印象としては「ふーん」と感じても「へぇー」という驚きや、新たな知見は感じることはできないレベル。
 文章は、著者の質問に対する回答と、それについて著者の感想を述べるという構成が中心になっているが、その感想が、「魅力的」「すごく明るい」といった、人柄を表す程度の幼稚な表現になってしまうのがとてももったいない。
 漢字にはルビが多く振られていることから、対象年齢が若年層であろうことが推測されるけれど、そのルビが間違っていることもあるし、誤記も少なくない。
 例えば1万メートルの周回について、ご丁寧にもカッコ付けで「トラック26周」と表記してみたり(P113)、積水化学の深山コーチの読み仮名が「ふかやま」になっていたり(P168・正しくは「みやま」)、「小鳥田貴子」選手に至っては、登場する2回とも「小鳥貴子」選手になっているなど、極めて雑な作りである。
 しかも文章表現が拙く、なかなか内容に没頭することができない。例えばP108には、トラック選手のスピードが、マラソンには必ずしも直結しないという例として、次の文が続く。

「ラドクリフ選手が大きなトラック競技大会(オリンピックや世界陸上など)で、いつも最後の1000m、400mで抜かれトップを奪われたデラルツ・ツルさんは、同じ2003年ロンドンマラソンを走ったが10位と振るわなかった。」

 この文の疑問@ 主語がどこにあり、どの文に係っているのか全くわからない。「トップを奪われた」のはどちらなのだろうか?
 疑問A なぜラドクリフ氏は「選手」で、ツル氏は「さん」付けなのか、使い分けが不明。
 疑問B カッコ書きで例示はあるにしても「大きなトラック競技大会」という表現がとても曖昧。大規模な、あるいは国際的な陸上競技大会のトラック種目などと表現してほしい。
 疑問C 「同じ2003年・・・」とは、何と「同じ」なのか理解することが困難(てっきり「同じ」は「2003年」に係っているものと思いこみ、パリ世界選手権と「同じ年」という意なのかと思っていたけれど、よく資料を当たると「共に出場した同じレース」という意で「2003年ロンドンマラソン」に係っていることがようやく理解できた)。
 などなど、国語の悪文例としては最適だが、少なくともこの本からは「プロのジャーナリスト」としての価値は全く見出すことができない(そもそもタイトルからして、日本語として成立するのか疑問。日本を代表する名門出版社が、よくGOサインを出したものだと不思議に思ってしまう)。

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