シドニーへ
−彼女たちの42.195km−

　スポーツ専門誌「Number」に連載された、女子マラソンのシドニー五輪選考過程を追った記事「彼女たちの42.195km」に加筆・修正して、オリンピックから半年近く経過して出版された単行本。
　オリンピックの興奮醒めあがらぬ時期に出版される本も良いが、こうして後になって振り返りながらこの本を読むと、金メダル（だけではないが）の影にはこんな厳しい世界を潜り抜けてきたんだと、改めて驚かされる。
　非常にまめな取材と、著者の洞察力には頭が下がるが、いつのまにか他の選手の話に切り替わっていたりして、若干読みずらい点だけがちょっと残念。
　
　世界的に見ても、女子マラソン史上最もハイレベルとなった選考の影で、選手、コーチ、そして恩師はどんな想いで選考の日を、そしてオリンピックの日を迎えたのだろう。
　文中にも触れられていたが、この本を読んでいると、オリンピックのスタートラインが、彼女達にとって、ひとつのゴールラインだったのではないかとすら感じてしまう。なるほど、そう考えると、なぜこのタイトルがつけられたのかが納得できる。シドニー女子マラソンの総集編としての一冊として、マラソンファンならばぜひ読んでおきたい。