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敗因の研究

敗因の研究
著者 日経新聞運動部
出版社 日本経済新聞社
出版年月 1999年
価格 \1,500
入手場所 N蔵書
書評掲載 2001年2月
★★★★☆

 決して「おもしろい」内容の本ではないし、「所詮は結果論」と受け取られがちなため、非常に難しいテーマである。そのためか、しなければならない行為のはずなのに、この手の本は少ない。

 本書は、「敗れるべくして敗れた」選手。「敗れるはずがないのに敗れた」選手。「盛者必衰」など、4つのテーマから、選手のインタビューを基に「敗因の研究」を行っている。
 なかでも、様々な種目において、“最強の実力”を持っていながら、“最強の称号”を得ることがかなわなかった選手を対象にした、第2章「五輪の見えざる壁」を読んだ後は、やるせない想いで一杯になる。
 日本のマスコミは、「五輪には魔物が住んでいる」と口をそろえて言う。しかし、その「魔物」とはマスコミそのものではないのか。そんなことを最も感じさせてくれた、水泳の長崎宏子選手の話題などは同情を拭えない。
 一方、文字通り敗戦をバネに世界チャンピオンに上り詰めた、ボクシングの柴田国明選手など、敗北を前向きに捉える選手の存在には、非常に励まされた気がする。

 選手にとっては、できることなら思い出したくない試合を思い出させ、いわば自己批判をしなければならないというのは、想像を絶する苦しさだろう。しかし、「力を出し尽くした」選手を称えるだけでなく、「力を出し尽くせなかった」原因を探らなければ、将来への前進もないのではないのだろうか。
 どこぞの国では、昨年のシドニーオリンピック女子マラソンで優勝した高橋尚子選手の強さの原因を、すぐに研究者グループを組んで探らせたという (ドイツだったか、ルーマニアだったか?)。

  「敗因を探る」という一見後ろ向きとも思える、このような研究を、もっと深めていってほしいと感じさせられた一冊である(特に「あとがき」は必見)。
 
 また、執筆者が巻末に紹介されている点も評価できる。「○○編集部編」などという書籍は、執筆の責任所在を曖昧にしているようで、信頼感に欠けてしまう。
 ちなみに、陸上関係では、ロス五輪の瀬古利彦選手が掲載されている。

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