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バルセロナ街道

バルセロナ街道
著者 後藤新弥
出版社 南雲堂
出版年月 1993年8月
価格 \1,600
入手場所 ブックオフ
書評掲載 2002年9月
★★★★☆

 1991年12月3日から、バルセロナ五輪終了の92年8月12日付けまで、日刊スポーツ新聞紙上に連載されたコラム「DAY'S」をまとめた短編集。

 連載は約250回にも及んだというが、その中から120本を選んで収録したという1冊。かなり深い取材がされているようで、選手の育った環境やお国事情、選手の友情など、オリンピックという一大イベントに関わる人たちのドラマを、見事に1本のコラムにまとめている。

 新聞コラムという、限られた文字数という制限がある中で、選手の心情や試合中の情景が伝わってくる。まさにこれこそ一流の「コラム」と呼ぶべきものなのだろう。
 残念なのは誤字・誤植が多く目に付くこと。せっかく空想の世界に浸っているのに、現実に戻されて興醒めしてしまう。
 また、新聞に掲載された時系列順(古いもの→新しいもの)ではなく、逆時系列順に収録されているので、読み進めていくと戸惑うことがある。これは物語として読むよりは、1章完結の短編集と割り切って読むべきか。

 内容的には古いが、このコラムには将来を予想するような文もあり、それがいったい現在(過去から見た将来)どうなっているのか検証する作業も楽しい。
 例え1992年8月9日のコラム(書籍ではP24-25)。「(マラソン)女子の場合、日本が金メダルを狙い取るためまでには、印象よりはるかに長い未来が必要だ」とあり、金メダルは男子の方が可能性があることを示唆しているが、2大会後のシドニー大会で高橋尚子選手が金メダルを獲得し、男子は世界との差が開いている。
 今では“強い日本”が当たり前となっている女子長距離界が、当時はメダルなんて考えられにくいことだったんだなー。そんな風に読むと、一味違った楽しみ方もできて面白い。

※ 第3回(1992年度)「ミズノ・スポーツライター賞」受賞作品

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