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永遠のランナー 瀬古利彦

永遠のランナー 瀬古利彦
著者 瀬古利彦・小田桐誠
出版社 世界文化社
出版年月 1989年6月
価格 \1,200
入手場所 京王百貨店・新宿店
(大古書市・
佐藤芸古堂からの出店)
書評掲載 2005年8月
★★★☆☆

 ボストンや福岡を始めとして、マラソン15戦10勝という驚異的な強さを誇った瀬古利彦選手は、言わずと知れた'80年代の日本の男子マラソン黄金期を支えたスター選手であり、その知名度はいまだに衰えていない。
 本書は、そんな記憶に残る名ランナー・瀬古選手が、競技の第一線から退き、中村清氏の亡き後のSB食品陸上部監督に就任した頃に上梓され、自らの競技人生を懐かしむかのように振り返っている。

 自伝という体裁を装ってはいるが、巻末のクレジットに著者名が(申し訳ない程度に)記されていることから、瀬古選手へのインタビュー等をもとに作られているようである。
 文章は単文中心で、決して上手とは言い難いが、瀬古選手が感情たっぷりに語る証言内容は、いささか衝撃的ですらある。
 饒舌な中村監督とは対照的に、選手時代には無口な印象があった瀬古選手だが、ソウルオリンピックの選考にまつわる周辺事情はもとより、中村監督に対する、大きな声では言えない不満がぽつりぽつりと語られていて、「優等生」のイメージがあった瀬古選手が、急に人間らしく思え、微笑ましく感じた。

 オリンピック前の不調に悩む姿や、期待されるがゆえに苦悩する様子が赤裸々に綴られ、ポーカーフェイスで颯爽と駆け抜けた伝説のランナーの、知られざる一面を見せてくれる一冊です。

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